低騒音舗装−世界的に見たその技術革新 (1)
                                                                        PDF版 1,632KB

ウルフ サンドベルグ(スウェーデン道路研究所)
By Dr Ulf Sandberg
Swedish National Road and Transport Research Institute (VTI)
Linkoping, Sweden
  E-mail: ulf.sandberg@vti.se
(訳:編集委員 藤田 仁(日本道路株式会社))
   



  スウェーデン道路研究所のサンドベルグ博士は、タイヤ/路面騒音の分野では世界的な権威として交通騒音制御分野での
第一人者として自動車、タイヤ、そして舗装の分野で広く知られている。

「サンドベルグ博士略歴」
サンドベルグ博士は1946年スウェーデン生まれ。チャルマース大学で1972年に電気工学修士。
リンチェビング工科大学で1987年博士.
論文名「タイヤ/路面騒音の発生メカニズム、測定方法、ならびに路面特性の研究」
修士取得後リンチェビング工科大学で2年勤務後VTI(スウェーデン道路研究所)に勤務。以後現在も勤務中。
 
 

  1. 低騒音舗装 -その歴史的所見

現在、我々は交通騒音の問題は第二次世界大戦以降の工業の近代化に伴って発生したと考えがちである。しかし、そうではない。歴史を見ていけば交通騒音問題は2千年も前に遡る。ローマ帝国の時代には交通騒音を減少するための交通規制が制定されている[Sandberg & Ejsmont, 2002]。18世紀から19世紀にはヨーロッパの舗石舗装において牛車や馬車の騒音を低減するため路面に藁を敷き詰めることは通常行われていた[Sandberg, 2009]。ただこれらは病院や重要人物の家や事務所の近くに限定して行われた。

都市における環境という面から舗装の考え方をドラマチックに変えたのは19世紀から20世紀初頭に行われた木質ブロック(杉や松)の使用である。これらは、この舗装の開発者であるサミュエル・ニコルソン(米国、ボストン)の名前から別名「ニコルソン舗装(Nicolson pavement)」と呼ばれる。彼は初期の舗装工法の抱える各種の問題を解決しようと1848年に本工法を考案した[Nicolson, 1859]。安全で耐久性があり、静かできれいな道を舗装しようと考えた。その多くを成し遂げることができたが唯一十分でなかったのは耐久性であった。最初に施工した舗装は7年後に打ち替えられた。19世紀後半から20世紀前半にかけて木質ブロック舗装は北米やヨーロッパの大都市の多くで低コストかつ低騒音の舗装として使用された。現在もなお数箇所でその舗装が現存している。図―1は、木質ブロックの敷設例を示したものである。
 
 

 
図1: オスロにおける1914年ごろの木質ブロックの舗装.
写真は1984年のノルディック道路回議で
"V?ghistoriska utst?llningen" から入手したもの


  江戸時代の騒音の状態を試験的に解析したところでは、低騒音の路面の存在を明らかにすることはできず、むしろ木製の橋は騒音源であった可能性があると思われ、馬の蹄に装着されたわらじは騒音低減に有効と考えられた [Otsuka & Sandberg, 2010]。

2. 本文の目的と注意
本文は読者に最近の世界的な低騒音舗装について技術的な試みや解決法についてまとめて示すことを目的としている。しかし本文は日本の読者を対象としているため、日本の技術についてはほとんどの読者が知っておられることを前提とし敢えて日本の技術開発については述べていない。必要ならば日本の技術についてはたとえば [Fujita, 2012]を参考にされたい。
なお、本文での騒音レベルdBの表現はA特性の重み付けを行った値を表す。



                                                                                

      

 

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