低騒音舗装−世界的に見たその技術革新(4)


 ウルフ サンドベルグ(スウェーデン道路研究所)
By Dr Ulf Sandberg
Swedish National Road and Transport Research Institute (VTI)
Linkoping, Sweden
E-mail: ulf.sandberg@vti.se
(訳:編集委員 藤田 仁(日本道路株式会社))



CPXを用いたOBSI(SRTTタイヤのみを使用する)と呼ばれる測定が米国の数多くのセメントコンクリート舗装に対して行われた。結果を図―5に示す。CDG路面は99dBのピークを示し、通常の密粒度アスファルトDACが101dBである[Sohaney et al, 2012]ことから2dBの騒音低減効果を示している[Rasmussen et al, 2008]。 2011年に筆者らが行ったスウェーデンの結果では比較路面に対し3dBの騒音低減であった。NGCS路面は100-101 dB [Scofield, 2012]であり、この結果からは彼らの意図に反し良い結果は見られていない。しかし、 [Scofield, 2012]による別の比較では NGCSと CDG の差は約 2 dBであった。 Scofieldによる CDGはRasmussenらが測定したものより騒音が大きいことが考えられる。スウェーデンで2012年に行った測定ではNGCSは比較路面(アスファルト)よりも約1dB高かった。このことから 良好に施工された CDGはセメントコンクリート舗装の騒音低減において最良であり、比較路面よりも2−3dB低い騒音とすることができる。
ポーラスコンクリートについても試行がいろいろと行われてきたがポーラスアスファルトの騒音レベルに匹敵する低い騒音レベルにはなかなか達していない。例外としてオランダのModieslab と呼ばれる特殊かつ高価な事例がある[Sandberg, 2009]。
         

                         図-. 5: 米国での時速96 km/hにおけるコンクリート舗装の騒音測定レベルの分布図。
                                  オレンジの実線はCDG路面. 代表的な密粒度アスファルト (DAC) や比較路面
                                  はおよそ 101 dBを示す. 図は[Rasmussen et al, 2008]より。

CDSや NGCSは空気や水を十分に排出させることによりエアポンピング音を減少させる効果を持ち、タイヤが走行する上で滑らかな路面であると考えられる。これらの路面は好ましい「ネガティブテクスチャ(負のテクスチャ)」を持った路面であると特性付けられる。すなわちタイヤ/路面の接着面積を減少させるテクスチャを持っているということを意味している。

7. 多孔質弾性舗装 (PERS)

7.1 世界的なプロジェクト
多孔質弾性舗装は、もともと1970年代にスウェーデンで開発され、日本において実用化するための作業が行われてきた。横浜ゴム株式会社と日本道路株式会社が共同で行った座間市、平塚市、飯塚市の試験施工は非常に有用なものであったが、残念なことにすでに撤去された [Fujita et al, 2011]。独立行政法人土木研究所の走行試験場で施工されたPERSは未だ残っており、そこでの条件下では満足できる結果を示している と報告されている[Kubo, 2011]。 これら日本のPERSに関しては、読者はこれらの文献を参考にされたいが、 [Sandberg et al, 2010] でも、これら日本の開発についてまとめて記述している。
ヨーロッパにおいてはPERSに関する2つのプロジェクトが進行中である。ひとつはヨーロッパの数カ国でともに行っているPERSUADEと呼ばれるプロジェクト (www.persuadeproject.eu )であり、もう一つはオランダの国家的プロジェクト(正確な名称は不明)である。
PERSは滑らかなテクスチャと高い空隙率によりエアポンピング音を減少させるとともに吸音効果により騒音を低減するほか、その軟らかさによりタイヤ/路面間の静的および動的変位を減少することができるものであると考えられる。

7.2 PERSUADEプロジェクト
PERSUADEプロジェクトは現在3年目に入っており、ほぼ計画の中間に差し掛かっている。初年度は主として材料開発に当たったが、その大部分を健康への影響や火災の危険性の解析に費やした。ゴム骨材、硬質骨材(砂や小粒径の石)やポリウレタン樹脂や添加剤の各種混合物についての結合強度や基層への接着強度、滑り抵抗、摩耗性の試験を実施した。 全ての目標を同時に満足させることは非常に困難であった。現在のところ最良の配合としては容積配合で32%のゴム骨材、48%の硬質骨材、20%のポリウレタンとしたものでその締固め後の空隙率は31%である。
本材料は、若干仕様に対し十分な施工結果ではなかったが、現在デンマークの Arnakke(Roskildeの数km西側).の休憩エリアに施工されている。最初の施工ではポリウレタンが湿度により発泡してしまい失敗した。2度目は湿度は問題なかったが夏季の数ヶ月間で、おそらく紫外線の影響と考えられるがポリウレタンが黄色化し結合強度が低下した。2012年10月に入ってポットホールが発生し材料は完全に崩壊した。図―6に試験区間の一部を示す。

                     
                                図ー6: デンマーク ArnakkeのPERS試験施工、施工後半年が経過 (October 2012).

材料開発は継続し、より大きな規模(代表的なものは延長80m)の試験施工を2012年にデンマーク、ベルギー、ポーランド、スウェーデン、スロベニアで行う計画である。
現在の関心(不安も含まれるが)は初期のものよりも小さな空隙率にしたことにより、水分が含まれ、乾燥するときに「スポンジ」のような挙動を示すことである。底部に存在する水分は基層との接着を悪化させるだろう。空隙を小さくしたことは騒音低減効果を下げ、硬質骨材を増やしたことによりたわみ性が小さくなっており表面の空隙詰まりも生じるかもしれない。
現在まで、そして今後の本プロジェクトの状況はウェブサイトで見ることができる。

 


                                                                                

      

 

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