低騒音舗装−世界的に見たその技術革新(6)


 ウルフ サンドベルグ(スウェーデン道路研究所)
By Dr Ulf Sandberg
Swedish National Road and Transport Research Institute (VTI)
Linkoping, Sweden
E-mail: ulf.sandberg@vti.se
(訳:編集委員 藤田 仁(日本道路株式会社))


  9. 薄層アスファルト舗装 (TAL)
薄層アスファルト舗装(TAL)は道路管理者にとって道路の維持管理コスト低減に効果があること、さらに主要道路の近郊の住民からの低騒音へのニーズもあってその適用が増加しているように思われる。TALは基本的にDACやSMAやPACと比べ厚さが薄い(通常30mm未満と定義される)点を除いては異なるものではない。ただ、時には特殊な粒度で設計されたり、厳選された骨材を使用するものも存在する。また、最大粒径8mmあるいはそれ以下の骨材を使用したDACやSMAも薄層アスファルト舗装として通常使用される。
いくつかのタイプのTALが存在しているが、筆者は以下のように分類したいと考えている。
" 通常の小粒径 DAC, PACおよび SMA。一般的に国が定めた仕様による (1-3 dBの騒音低減)。
" 通常の小粒径 DAC, PACおよび SMA,。国が定めた仕様によるが、より良い騒音低減が可能なように改良を加えたもの (2-4 dBの騒音低減)。
" 通常の小粒径 DAC, PACおよびSMA。企業が特別に開発したもので国の仕様とは異なる。企業独自の製品である (1-4 dBの騒音低減)。
" 特殊かつ特別に進化した小粒径アスファルトで、企業独自の仕様による。特に性能を向上させたもの (3-8 dBの騒音低減)
これらのタイプの騒音低減効果を上記の括弧内に示したものである。多くのヨーロッパの国においては独自のより高度な舗装路面が低速あるいは中速の市街地および郊外の道路において広く用いられてきている。ただし英国、オランダ、フランスにおいては使用されていない。
TALとしてはしばしば空隙率14-24 %のものが用いられる。 これは吸音によって騒音低減効果を向上させようとしたものである。しかし、吸音効果を向上させるためには層厚が必要である。TALの吸音はわずかであるが、重要なことは高い空隙により、エアポンピング音を効果的に減少させることである。
薄層舗装の騒音低減はそのタイプにより下記の特性の2つもしくはそれ以上によってもたらされる。
" 小さな最大粒径の骨材を使用することにより滑らかなテクスチャとし、タイヤ/路面の接触点の間隔を小さくする。
" たとえば骨材の形を厳選するなどの特殊な骨材を用いる。
" 骨材の頂点をなめらかに揃えることにより、タイヤのころがりをスムースにする。
" ネガティブテクスチャと呼ばれるものを形成する。
" エアポンピング音を減少させる開粒度のテクスチャを形成する。
" エアポンピング音を減らし吸音をする。
これら上述した特性を得るには特別なコストが必要である。ただ厚さが薄いためこれらのコストは材料が少なくなることで相殺できる。
騒音低減の面から見れば薄層アスファルト舗装も他の舗装と同様に、その効果が低下していく。2〜7年にわたり44の路面を調査したオランダの研究では市街地においては0.5db/年、高速道路では0.6dB/年の割合で騒音低減効果が低下していく[Bendtsen et al, 2012]。しかし、この低下割合のばらつきは大きい。
多くの情報は[Sandberg, 2009], [Sandberg (ed), 2011].に述べられている。

10. 超小粒径骨材路面
アスファルト混合物の最大粒径(MAS)は騒音特性に関して重要な要因である。MASの観点からは以下のような分類が考えられる。
超小粒径 MAS = 3-4 mm
小粒径 MAS = 5-9 mm
中粒径 MAS = 10-13 mm
大粒径 MAS = 14-20 mm
一般的には騒音特性はMASと良好な関係があるといえる。MASが小さくなれば騒音も小さくなる。薄層アスファルト舗装でも述べたが舗装に使われる小粒径骨材はほぼ共通している。安全性や耐久性を考えれば小さくできる限界があると言える。
ヨーロッパでは近年低騒音舗装として新しい技術が始められた。フランスの企業であるコーラス(Colas)社が2008年より「Nanosoft」と呼ばれる特許技術により2層式ポーラスアスファルトに匹敵する8〜9dBを超える低騒音舗装を提供している。超小粒径骨材として0〜4mmの骨材を使用し大きなマクロテクスチャを持ち良好な排水機能を有するというものである(図―8参照)。排水機能については25〜30%の空隙を有することにより実現し、厚さは25〜40mmであるにもかかわらず十分な吸音特性を持っている。コーラス社が行った吸音に関しての研究では最適な骨材サイズ(1〜2mm)と最適な空隙量を組み合わせ、結果として望ましい粒度曲線を示している[Gautier, 2008]。 そのような路面で十分な安定性と摩耗抵抗性を持たせるというチャレンジはSBS改質アスファルトによってこそ実現できたのであろう。
 
 

                 

                                           図ー8: 新設時のNanosoft路面、2008年ポーランドのPoznanで施工された。
                                                    コインの直径は 23 mm。 写真はポーランドTUGの Piotr Mioduszewski より。
  上記の情報はNanosoft路面としての企業としての情報であり、騒音の測定は第三者の研究者によって行われることが望ましい。ポーランドでの測定結果では数例のNanosoft路面の騒音はSRTTタイヤを用いたCPX測定で7dB、AAV4タイヤを用いた測定では4dBの騒音低減であった[Mioduszewski, 2012]。しかし、これは最大骨材サイズが5mmの初期の仕様のものであり、現在のものとは異なっているようである。 筆者はおそらく1dBは初期のものとは異なっていると考えており、結果として乗用車であれば8〜9dBの騒音低減というコーラス社の値と大きくは異なることはないだろうと考えている。しかし、トラックタイヤを用いた場合に騒音低減が小さくなることは十分考えられることである。というのは、小粒径の舗装上ではトラックタイヤの騒音が相対的に大きいことは知られていることである [Sandberg & Ejsmont, 2002]。 この点で乗用車のタイヤに対しては良い結果となっている。

多くの超小粒径骨材路面を含むスイスのTALとSMAに関する研究報告がある [B?hlmann et al, 2012]。最大粒径が4mmおよび8mmの72箇所の路面をSMA11と比較した。その結果を図―9に示す。4mmの最大粒径の路面は各種のNanosoft と他の2社により施工された同様な路面 である。それらはNanosoftとは違ったコンセプトで製造されている。 4 mmの路面は 供用後0〜3年で空隙率は 16-22 %、また 8 mmの路面は供用後0〜6年、空隙率は6-12 % である。
 
 

                 

                           図ー9:スイスの低騒音舗装調査結果 [B?hlmann et al, 2012]. SRTTタイヤ使用、速度50km/hでCPX法による。
  8 mm の路面は平均2.3dBの騒音低減を示し、8mmの路面は平均 6.5 dBとなっている。筆者が聞いたところでは4mm路面の騒音レベルの変動は主として供用年数によるものであり、騒音低減は1年あたり1dB小さくなるとのことである。これは極めて早い変化であり、速度50km/hでの2層式のポーラスアスファルトにおいて予測されるものと同等に良くない結果である
図ー9において4mm路面と8mm路面のラップする部分がないことは興味深い。これは、騒音への最大粒径の影響が大きいことを示している。この図に最大粒径16mmの路面の結果を加えてもおそらく同様にオーバーラップしないであろう。
 
 


                                                                                

      

 

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