低騒音舗装−世界的に見たその技術革新(7)


 ウルフ サンドベルグ(スウェーデン道路研究所)
By Dr Ulf Sandberg
Swedish National Road and Transport Research Institute (VTI)
Linkoping, Sweden
E-mail: ulf.sandberg@vti.se
(訳:編集委員 藤田 仁(日本道路株式会社))


  11. ポーラスアスファルト (PAC) -1層
すでに1層のポーラスアスファルトは長年用いられてきており、通常のものと考えられるので最近の2つの試みについてのみ述べることとする。
最初の試みは、ニュージーランド交通局(NZTA)がエポキシアスファルトを用いてPACの強化を図ったものである。エポキシアスファルトを用いたPAC(ニュージーランドでは開粒度ポーラスアスファルト(OGPA)と呼ばれる)は 初めにNZTAの室内促進試験施設(CAPTIF)で、次に現場でプラントでの製造や施工工程に特に修正を加えることなく実施された。20%の空隙率で施工されたこの舗装はSPB法での測定で良好な結果を示し、4年経過後の供用性も良好である(2012)。
エポキシアスファルトと呼ばれるバインダーはおよそ15%のエポキシと85%のアスファルト(それと数種の添加剤を加える)から成り、養生後は固くなり、ゴム的な性質はわずかとなる。初期の研究ではエポキシ改質バインダーの主な利点は酸化に対する抵抗性にありそうである。筆者はこの手法は交差点などの水平方向の応力が高い箇所にPACを適用する際に可能性があると思っている。
二つ目の試みはスウェーデンのJonkopingからHuskvarna間の自動車道E4の最大粒径11mmの1層PACの例であり、SMA16と比べて2-3dBの騒音低減しかなかったものである。その理由は厚さが40mmしかなく、吸音のピークがタイヤ/路面騒音のピークと合っていなかったためである。騒音低減を大きくするため、供用2年後に厚さ30mmの1層PACをオーバーレイした。2年経過した後ではあるが2層式ポーラスアスファルトと同様な形となったことで、騒音低減も2-3dBから7dBへと大きくなった。
これは年数を経ていても厚いPACを得るために効果的な方法である。もちろん当初の層が空隙を失っていないということが条件である。

12. 2層式ポーラスアスファルト (DPAC)
2層式ポーラスアスファルト(DPAC)は最も低騒音舗装を得るのに効果的と一般には考えられている。一方、温暖な気候の地域では、自動車道のDPACの寿命はおよそ平均で8年である。スカンジナビアのような厳しい寒冷地ではスタッドタイヤの影響でその半分の寿命となる。図―10に代表的なDPAC舗装を示す。
 
 

                       

                                      図-. 10: 道路端から見た2層式ポーラスアスファルト舗装。事例はイタリアのもの。
                                                上層は空隙20-28%で厚さ25-30mm(最大粒径4あるいは6、8、11mm)下層は
                                                同じ空隙率で厚さ40-50mm、11/16mmの骨材を使用。施工は2層別々の施工
                                                である。
  DPACはオランダ、ドイツ、イタリアでよく用いられている。しかし米国、フランス、オーストラリア、香港ではほとんど使用されていない。これらの国ではアスファルト舗装は通常厚さ50mmまでであり、2層式技術は厚い舗装にしか使用できない。しかし、本当に我々は35-45mmより厚い舗装は必要としないのであろうか?
スウェーデンでは現在、DPACと1層のPACの両方を行っているが、前述のJonkopingからHuskvarna間の自動車道E4での騒音は面白い結果を示している。当初の騒音低減は通常のSMA16に比べ7-8dBであった。これは仮想比較路面との比較では1.5dB差し引かねばならない。驚くべきことに1年後の騒音は変化しなかった。つまり、空隙詰まりが騒音に影響を与えなかった。2年後(2012)にも空隙詰まりはあったが1dBしか低下しなかった。現地の交通量はかなり重交通で大型車混入率も大きかった。
1層のPACおよびDPACの上層の最大粒径は11mmである。多くの国では8mmを採用している。スウェーデンの道路局は冬季のスタッドタイヤによる摩耗のため11mmよりも小さな最大粒径を使用したがらない。経験によれば8mmを採用すれば騒音低減は1dB大きくできる。オランダでは8mmを上層に採用し8dBの騒音低減という結果となっている[Morgan, 2008] (ただ仮想比較路面と比べるならば1dB差し引かねばならない)。スタッドタイヤを使用している国ではこの選択が最良であろう。最大粒径が8mmを下回ると摩耗が多くなってしまう。
スウェーデンにおいては、司法により自動車道沿線における騒音低減のための低騒音舗装を使用するよう求められた。面白いことは1層のPACとDPACの騒音の差は5dBあるが、DPACの30mm厚の上層は1層のPAC(ただし5-8mm厚い)と同じ混合物である。このことは騒音低減の3分の2はDPACの下層(35-40mm厚)によって行われることを意味する。
DPACの全体の音響特性に対する下層の影響を調査した最近の研究では80mmの厚さではタイヤ/路面騒音のピークと吸音がよく一致するが、40mmでは一致しないという結果が得られている [Sandberg & Mioduszewski, 2012]。図―11を見れば1層と2層のポーラスアスファルトの周波数ごとの吸音に違いがあることが明らかである。
 
 

                         
                             図ー 11: SRTTタイヤを使用したCPX法(90 km/h)による1/3 オクターブ解析結果。
                                        AV4タイヤ(比較用トラックタイヤ)を用いても同様である。
  吸音効果について図―12に示す。吸音ピークの高さは空隙率により決まり、ピークの幅はフロー抵抗により決まる。またピーク周波数(ピークの位置)は層厚によって決定される。
筆者は周波数のピークに関して重要なことは層厚のみでなく、層の中で上から下までどのように音が伝わってきたかが重要であると考える。もし空隙が広ければ(最大粒径が11ないし16mmの場合)、音は直線的に短い距離で伝わるが、空隙が狭い(最大粒径が4mmもしくはNanosoftの場合)と曲がって伝わる。このことにより、最大粒径4mmのNanosoftが厚さ40mmであるのに厚さ80mmの最大粒径11あるいは16mmのスウェーデンのDPACと同じように800-1200Hz の吸音特性を有するかが説明できるだろう。
 
 

                  
                                         図ー12: 3種の舗装のパラメータと吸音率、周波数との関係。
                                    本図はドイツ. M?ller-BBM のDr Thomas Beckenbauerの許可を得て掲載.



                                                                                

      

 

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